
大きな地震のあとに出される後発地震注意情報は、名前から、すぐに避難しなければならないのではと不安に感じる方も多いかもしれません。
この情報は、今すぐ避難を求めるものではありません。
普段の生活は基本的に続けて問題ありませんが、数日間は再び強い揺れが起きる可能性を意識し、家具の固定や避難経路の確認など、身の回りの安全を見直しておくことが大切です。
避難が必要かどうかは、津波警報や避難指示など、別の防災情報で判断します。
この記事では、後発地震注意情報とは何か、そして、なぜ北海道や三陸沖で特に注意が必要なのかを、初心者の方にも分かりやすく解説しています。
なお、南海トラフ巨大地震については本記事では扱っていません。南海トラフ地震の場合は、後発地震注意情報ではなく、南海トラフ地震臨時情報の「巨大地震注意」が対象となるためです。
後発地震注意情報とは何か|私たちに何を伝えているのか
後発地震注意情報は、大きな地震が起きたあと、地面の状態がしばらく不安定になる可能性があることを知らせる情報です。
正式な名称は「北海道・三陸沖後発地震注意情報」で、2022年12月16日から運用が始まりました。
この情報は次に起きる地震の日時や規模を予測するものではなく、地震の発生を断定するものでもありません。
今は普段よりも慎重に行動したほうがよい期間に入ったという状況を社会全体で共有するための目安として発表されています。
注意レベルを一段階引き上げるための合図であり、仕事や学校など日常生活を止める必要はありません。
ただし、次のような備えを確認し、行動の意識を少し変えることが求められます。
・家具の固定状況を確認する
・避難経路や非常用持ち出し袋を見直す
・揺れが起きた場合に危険となりやすい場所や行動を意識して控える
後発地震注意情報は、不安をあおるための警告ではなく、冷静な判断と備えを支えるための情報です。正しく理解し、日常生活の中で無理のない備えを心がけることが大切です。
必ず大地震が起きるわけではない理由
後発地震注意情報が発表されると、「次はもっと大きな地震が来るのではないか」と身構えてしまいがちです。しかし、この情報は将来の地震を断定するものではありません。
現在の地震研究では、発生する正確な時刻や規模を言い当てることはできず、「起きる・起きない」を白黒では示せないのが現実です。
後発地震注意情報が伝えているのは、普段より注意を向けたほうがよい状態に入ったという事実です。たとえるなら、雨雲が広がり始めた空を見て傘の準備をするようなものと言えるでしょう。
必要以上に恐れるのではなく、落ち着いて身の回りを見直すことが、この情報の本来の活かし方です。備えを確認し、行動を少し整えることが、地震と向き合ううえで大切なポイントです。
北海道・三陸沖で後発地震注意情報が特に重視される理由
北海道沖から三陸沖にかけての海域は、日本でも特に大きな地震が起きやすい場所として知られています。
これは、太平洋プレートが日本列島の下へ沈み込むことで、長い時間をかけて地下に強い力がたまる地質構造にあるためです。
関連記事:プレート境界型地震とは?特徴や仕組み・断層型との違いを簡単に解説
この地域で一度大きな地震が起きると、地下では「一か所だけが動いて終わり」にならないことがあります。最初の揺れによって周囲のプレート境界や断層の力のバランスが変わり、別の場所が続いて動きやすくなると考えられているのです。
後発地震注意情報は、こうした特徴を踏まえ、
「最初の地震のあとも、しばらくは状況が落ち着いていない可能性がある」
という事実を社会全体で共有するために設けられました。
特に北海道・三陸沖は、過去にも巨大地震や大津波を経験してきた地域です。同じような被害を繰り返さないため、早い段階で注意を促し、備えを見直す時間を確保する──それが、この地域で後発地震注意情報が特に重視される理由です。
日本海溝・千島海溝で起きてきた巨大地震
日本海溝・千島海溝沿いは、過去にマグニチュード8〜9級の巨大地震が繰り返し起きてきた場所です。揺れが強く、津波の影響も広範囲に及ぶため、油断はできません。
ここでは、どの地域で特に警戒が必要なのか、そして巨大地震のあとになぜ注意が続くのかをわかりやすく解説します。
警戒が必要とされる地域の特徴
日本海溝・千島海溝沿いは、地殻の動きが活発で、過去に大規模な地震を何度も経験している地域です。
この地域の地震は、揺れの範囲が非常に広く、津波による被害も及びやすいという特徴があります。
さらに、震源が海底に広がるため、陸から離れた場所で発生しても沿岸部に大きな影響が及ぶことがあります。
そのため、最初の揺れが収まった後も、油断せずに周囲の状況を注視する必要がある地域とされています。
巨大地震のあとに影響が続きやすい理由
日本海溝・千島海溝周辺では、一度の巨大地震で地下の力が完全に解放されるわけではありません。
むしろ、地中に残ったひずみは、まるでバネが部分的に縮んだままになっているような状態で、周囲のプレートに新たな負荷をかけ続けます。
そのため、時間をおいて別の場所で大きな地震が起こる可能性が高まります。
これまでの地震活動の積み重ねから、「大きな揺れのあとにはしばらく特別な注意が必要」という考え方が生まれ、後発地震注意情報の発表につながったのです。
後発地震注意情報の確率|次の地震が起きる可能性を冷静に理解する
後発地震注意情報が出ると、多くの人は「次の地震はどのくらいの確率で起きるのか」と気になります。
数字で示されると分かりやすいように感じますが、受け取り方を間違えると必要以上に不安になったり、誤解したりすることもあります。
ここでは、後発地震の発生確率がどのように考えられているかを整理し、数字に振り回されずに冷静に備えや行動に役立てる方法を解説します。
後発地震のリスクは平常時より高まる?
後発地震の発生確率は、数字だけを見ると決して高くはありません。
しかし重要なのは、「高いか低いか」ではなく、平常時と比べて地下の状態が変化しているかです。
大きな地震の直後は、地下のプレートや断層の力のバランスが崩れ、周囲に影響を及ぼしやすくなります。そのため、一定期間は次の地震が起きやすい環境になる可能性があります。
これは「必ず起きる」わけではなく、あくまで「普段より少し注意を向ける時期」に入ったことを示しています。
確率の大小に振り回されず、行動や備えを見直す合図として受け止めることが大切です。
確率を知ることのメリットと活かし方
後発地震注意情報では、「次に地震が起きる確率」が示されることがあります。数字で見ると漠然と不安になるかもしれませんが、ここで大切なのは、数字そのものを恐れるのではなく、日常生活や備えに活かすことです。
確率を知ることには、次のようなメリットがあります。
- 備えを見直すきっかけになる
数字が示すのは「普段より注意を向ける時期」に入ったという事実です。家具の固定や避難経路の確認など、日常の備えを再確認するタイミングとして活用できます。 - 冷静な判断を支える材料になる
確率を理解することで、状況を客観的に把握しやすくなります。恐怖に流されるのではなく、「必要な準備を整えるための情報」として受け止めることが大切です。 - 無駄な不安を減らせる
数字だけに注目して不安になるのではなく、「注意すべき期間」という意味で捉えることで、冷静に日常生活を続けながら備えられます。
つまり、後発地震の確率は、未来を断定するものではなく、備えを見直すための指標です。数字を正しく理解し、行動に活かすことで、地震に対して落ち着いた姿勢で向き合うことができます。
過去の後発地震から学べること
過去に起きた地震を振り返ることは、単なる記録を知ることではありません。
それは、次に同じ状況が起きたときに、私たちがどのように行動すれば被害を減らせるのかを考える手がかりになります。
後発地震は、特別な現象ではなく、実際に何度も経験されてきました。
過去の事例を知ることで、「最初の地震が終わったあと」にこそ必要な注意や心構えが見えてきます。
ここでは、実際の後発地震の事例をもとに、私たちが学ぶべきポイントを整理していきます。
東日本大震災も後発地震だった
2011年に発生した東日本大震災は、単独で突然起きた地震ではありません。本震の2日前にあたる3月9日、三陸沖の太平洋を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生していました。
この地震は宮城県や岩手県沿岸で強い揺れを観測し、津波注意報も発表されるなど、当時はそれ自体が大きな地震として受け止められていました。
その後、さらに規模の大きな揺れが続く可能性が指摘される中で、3月11日にマグニチュード9.0という観測史上最大級の巨大地震が発生しました。
この経緯から、3月9日の地震は巨大地震の前兆的な地震、いわゆる前震だった可能性があると考えられています。

(https://www.bousai.go.jp/jishin/nihonkaiko_chishima/hokkaido/index2.html)
当時、多くの人が「大きな地震はすでに終わった」と感じ、日常生活に戻りつつありました。しかし、その油断が許されない状況の中で、想定をはるかに超える揺れと津波が発生しました。
この事例が示しているのは、最初に起きた大きな地震で、地震が終わったと判断してしまうのは危険だという現実です。強い揺れが一度収まったとしても、それで状況が落ち着いたとは限らず、その後にさらに規模の大きな地震が続く可能性があります。
後発地震注意情報は、こうした教訓を社会全体で共有するために設けられた仕組みです。
過去の事例が教えてくれる注意点
後発地震注意情報を理解するうえで欠かせないのが、過去の地震から何が分かっているのかという視点です。
日本では、最初に発生した地震のあと、時間をおいてさらに大きな揺れが起きた事例がいくつもあります。しかし、これらは事前に「本震」として見抜けたわけではありません。
過去の事例が示しているのは、「必ず大きな地震が起きる」という予測ではなく、地震活動が一時的に高まる期間が存在する可能性です。
この不確実性こそが、後発地震注意情報の難しさであり、同時に重要なポイントでもあります。
後発地震注意情報は「行動を制限するための情報」ではなく、判断材料を増やすための情報です。
過去の事例を冷静に受け止め、必要以上に振り回されず、自分にできる備えを見直すことが何より重要だといえるでしょう。
後発地震注意情報が出たときの行動と日常の備え
後発地震注意情報が発表されると、不安から「避難すべきかどうか」で迷う人も多いでしょう。
しかし、この情報はすぐに危険が差し迫っていることを意味するものではありません。重要なのは、情報の意味を正しく理解し、落ち着いて行動することです。
ここでは、後発地震注意情報が出た際に「避難は必要なのか」、そして「なぜ普段の生活を続けてもよいのか」を整理し、日常を維持しながら備えるための考え方を分かりやすく解説します。

出典:内閣府 北海道・三陸沖後発地震注意情報の解説ページ
(https://www.bousai.go.jp/jishin/nihonkaiko_chishima/hokkaido/index2.html)
避難は必要なのか
後発地震注意情報は、今回初めて導入・発表された新しい情報であり、過去に同様の運用が行われた実績はありません。
そのため、この情報は「過去の経験則」で判断するものではなく、仕組みと目的を理解したうえで冷静に受け止めることが重要になります。
まず押さえておきたいのは、後発地震注意情報が出たからといって、直ちに避難が必要になるわけではないという点です。
この情報は、地震活動が一時的に活発になる可能性を知らせるものであり、避難行動を直接指示するものではありません。
実際に避難が必要となるのは、津波警報や避難指示など、具体的な行動を求める防災情報が発表された場合です。
後発地震注意情報の段階では、落ち着いて周囲の状況を確認しながら生活を続けることが基本となります。
普段の生活を続けてよい理由
後発地震注意情報が出ていても、すぐに生活を止める必要はありません。この情報は、差し迫った危険が確認されたわけではなく、注意と心構えを促すためのものだからです。
むしろ、仕事や家事など普段どおりの生活を続けることで、気持ちが落ち着き、状況を冷静に判断しやすくなります。
過度に行動を控えると、必要な情報を見逃したり、いざという時の対応が遅れることもあります。
大切なのは、生活を続けながら備えることです。非常用持ち出し袋の場所を確認する、家具の転倒リスクを見直すといった小さな行動が、現実的な防災につながります。
まとめ
後発地震注意情報は、不安をあおるものではなく、日常の中で備えを見直すための情報です。
避難の判断は、津波警報や避難指示など、ほかの防災情報と合わせて考えることが基本で、この情報だけで生活を止める必要はありません。
後発地震注意情報が示しているのは、恐れる状況ではなく、落ち着いて備える時間があるという事実です。普段の生活を続けながら、無理のない防災を意識することが、現実的な備えといえるでしょう。