計測震度とは?震度の決まり方と震度計・地震計の違いを解説

地震の揺れを説明する図

地震は突然発生し、私たちの暮らしに大きな影響を与えます。その揺れの強さを知るために欠かせないのが「震度」です。

震度は、地震による揺れの強さを示す指標で、被害の程度を判断する重要な手がかりになります。しかし、「震度◯とは具体的にどのくらいの揺れなのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、震度の測定方法や階級ごとの揺れの違い、さらに地震情報の伝わり方について、気象庁OBの視点からわかりやすく解説します。ぜひ、正しい知識を身につけ、いざというときに備えてください。

地震が起きると、「今の揺れ、どのくらい強かったんだろう?」と思うことがありますよね。実は、地震の揺れの強さは場所によって違うため、正確に測ることがとても大切です。

そこで使われるのが「震度」という指標です。震度は、地震がどれくらいの強さで揺れたのか、そしてその揺れがどんな影響を及ぼすのかを示します。

ここでは、震度の基本的な意味や、よく聞く「マグニチュード」との違いについて、わかりやすく解説します。

震度観測の歴史:体感から震度計へ

現在では、震度は震度計で正確に測定されていますが、かつては「人の体感」で判断していました。実際に揺れを感じた人が震度を決めていたため、主観が入りやすく、情報提供までに時間がかかるという課題がありました。

1988年には、震度の機械観測(計測震度)の試験運用が始まり、1993年には観測点が大幅に増強されました。そして、1996年4月に震度計による自動観測が正式に開始され、体感による観測は廃止されました。これにより、揺れの強さをリアルタイムで数値化し、より正確で迅速な震度情報の提供が可能となりました。

私が1990年4月から1992年3月末まで神戸海洋気象台で勤務していた頃は、まだ体感で震度を判断していました。観測当番中、「ブーッ!」と感震ブザーが鳴ると、驚きながらすぐに地震計を確認。震度を体感で判断しつつ、地震計(59C型地震計 倍率100倍)を使ってP波・S波の到達時刻や最大振幅を測定し、地震通報電文を作成して通報していました。

震度計がなかった時代、観測担当者は瞬時の判断と対応が求められる、まさに緊張感のある業務を担っていたのです。

震度階級とその意味:地震の揺れの強さを知る

震度とは、地震の揺れの強さを示す指標で、地震の震源地から伝わる揺れを観測した場所で測定します。震度は、揺れの強さや建物への影響を基にした尺度で、気象庁が定めた震度階級(0~7)に基づいています。震度0は感じないほどの揺れ、震度7は建物が倒壊するほどの強い揺れです。

震度は、0から7までの階級に分かれています。各震度は、その揺れの強さと、建物や人々に与える影響に基づいて分類されています。

  • 震度0: 揺れを感じない、または感じることができても非常に軽微。
  • 震度1: ほとんどの人が感じないが、わずかな揺れを感じることがある。
  • 震度2: わずかな揺れを感じるが、通常は日常生活に影響はない。
  • 震度3: 人々がはっきりと揺れを感じる。軽い物が動く程度の揺れ。
  • 震度4: ほとんどの人が揺れを感じ、棚や物が落ちることがある。
  • 震度5弱〜5強: 大きな揺れが感じられ、物が転倒するなどの被害が発生する可能性がある。
  • 震度6弱〜6強: 強い揺れで、人々が転倒したり、建物に大きな被害を受ける可能性が高い。
  • 震度7: 非常に強い揺れで、建物が倒壊するほどの影響を与える。

震度とマグニチュードの違い

震度とマグニチュードは、よく混同されがちですが、実はまったく違うものです。

マグニチュード
地震のエネルギーの大きさを表します。

震度
実際に感じる揺れの強さを示します。

また、大きな地震(マグニチュードが大きい)でも、震源が深かったり遠かったりすると、揺れ(震度)はあまり強くなりません。逆に、小さな地震でも、震源が浅くて近い場所で発生すると、強い揺れを感じることがあります。

このように、マグニチュードと震度はそれぞれ意味が違うので、ニュースなどで見るときは「地震の規模」と「揺れの強さ」を分けて考えるとわかりやすいですね。

私たちがニュースなどで目にする「震度」は、どのように測定されているのでしょうか? 地震が発生すると、気象庁の震度計が揺れを記録し、リアルタイムで震度を算出します。しかし、地震の情報には「マグニチュード」もあり、混同しやすいですよね。

ここでは、震度計がどのように揺れを測定しているのか、また「震度計」と「地震計」の違いについて詳しく解説します。

「震度計」と「地震計」、何が違うの?

地震を観測する機械には「震度計」と「地震計」がありますが、実はこの2つ、役割が大きく違います。

震度計は「この場所でどれくらい揺れたか」を測るもの。
地震計は「地震そのものの規模や震源地」を調べるもの。

では、それぞれ何をしているのか、もう少し詳しく見ていきましょう。

● 震度計とは?
震度計は、ある地点での揺れの強さを測るための機器です。地震が起きると、震度計がその場の揺れを記録し、震度の大きさを自動的に計算します。

たとえば、同じ地震でも「震度5強」と発表される地域もあれば、「震度3」となる地域もありますよね。これは、震源までの距離や地盤の違いによって、感じる揺れが異なるからです。震度計は、その場所ごとの「体感に近い揺れ」を数値化する役割を持っています。

● 地震計とは?
一方、地震計は「地震の波」を記録する装置です。地震が発生すると、地震波(P波やS波など)が伝わります。地震計はその微細な揺れを感知し、震源の位置やマグニチュードを計算するために使われます。

つまり、震度計は「この場所の揺れの強さ」地震計は「地震そのものの情報」を測るもの。
ニュースで「震度6弱」や「マグニチュード7.0」と発表されるのは、それぞれ別の機械で観測したデータをもとにしているんです。

この2つの違いを知っておくと、地震情報がもっとわかりやすくなりますね。

震度計の仕組みについて

地震が起きたとき、どれくらい揺れたのかをすぐに知るために、気象庁では1996年10月1日から正式に震度計を導入しました。

震度計は、地面の揺れを感知するセンサーを備えた装置で、日本全国に設置されています。地震が発生すると、これらの震度計がリアルタイムで揺れを記録し、すぐに震度を計算してくれるのです。

では、震度計はどのように揺れを測っているのでしょうか?

実は、震度計には2つのセンサーが使われています。

● 加速度センサー
地面の揺れの「加速度」を測るセンサーです。地震の初期の揺れ(P波)を捉えるのが得意で、いち早く揺れを検知します。

● 速度センサー
地面の揺れの「速度」を測るセンサーです。揺れの持続時間や、揺れの変化のパターンを正確に記録します。

この2つのセンサーが連携して動くことで、震度計は地震の揺れを詳しく分析し、震度を決定することができるのです。

こうして、私たちがニュースなどで目にする「震度○○」という情報が、素早く正確に伝えられています。

震度計はどこにある?どうやって観測している?

地震の揺れを正確に測るために、気象庁は全国に約600台の震度計を設置しています。さらに、市町村が独自に設置しているものも含めると、合計で1,300台以上にもなります。

では、震度計はどこに設置されているのでしょうか?
また、どのようにして揺れを観測しているのでしょうか?
次の項目で詳しく見ていきましょう。

震度計の設置場所

震度計は、日本全国のさまざまな場所にあります。

  • 市町村庁舎の敷地内(約200台)
    市町村が管理する震度計は、市役所や町役場などの敷地に設置されていて、そこで観測した震度をすぐに表示し、都道府県や気象庁にデータを送ります。
  • 都市部の公共施設やビル内
    病院や学校、重要な公共施設の中にも震度計があり、地震が発生した際に素早く揺れの強さを記録します。
  • 山間部や交通の要所
    都市部だけでなく、山間部や交通インフラの近くにも震度計が設置されています。例えば、新幹線の沿線や大きな橋の近くなど、安全を確保するために欠かせない場所にも設置されています。

震度の観測方法

震度計は、地面の揺れを感知すると、すぐにデータを記録します。そのデータはリアルタイムで気象庁に送信され、すぐに震度情報として公表されます。これにより、私たちは地震が発生した直後に震度情報を知ることができるのです。

震度計は、「揺れの強さをできるだけ正確に測れる場所」に設置されていて、都市部でも山間部でも、どこで地震が起きても迅速に情報を伝えられるようになっています。

こうした震度計のネットワークのおかげで、私たちは地震発生後すぐに震度情報を知り、安全対策を取ることができるのですね。

計測震度計(計測部・処理部) 出典 : 気象庁 正確な震度観測を行うために
(https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/shindo-kansoku/seikakunashindo_set.pdf)

地震発生後、次の順番で情報が発表されます。
ただし、震度速報、震源に関する情報の発表基準は震度3以上です。

約 数秒  緊急地震速報
約 1分半 震度速報
約 3分  津波警報・注意報
約 3分  震源に関する情報
約 5分  震源・震度情報
約10分  長周期地震動に関する観測情報
約15分  推計震度分布図 

地震及び津波に関する情報のタイムライン
出典 : 気象庁 地震及び津波に関する情報 URL: 気象庁|地震情報について  

地震の揺れの強さを示す震度は、私たちの安全を守るために欠かせない情報です。気象庁は全国の震度計でリアルタイムに揺れを測定し、迅速に発信しています。

また、「震度」は地域ごとの揺れの強さ、「マグニチュード」は地震の規模を表すもので、それぞれ意味が異なります。これらを正しく理解することで、適切な対応ができます。

気象庁が発表する緊急地震速報や津波警報、地震情報を正しく知り、日頃から備えておくことが大切です。

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