地震は突然発生し、私たちの生活に大きな影響を与える自然災害です。その中でも、地震の揺れの強さを知るために重要なのが「震度」です。
震度は、地震によって引き起こされる揺れの強さを表す指標で、災害の発生にどれだけの影響を及ぼすかを判断するために欠かせない情報です。
本記事では、震度の基本的な理解を深めるために、震度の測定方法やその階級、体感による違い、さらには地震情報の伝達経路まで、わかりやすく解説します。
地震の揺れを測る「震度」とは
地震が発生すると、その揺れは場所や状況によって異なります。そのため、地震の揺れの強さを正確に測ることが非常に重要です。これを行うために「震度」という指標が使われ、私たちの生活や安全に関わる重要な情報を提供します。
震度は、地震がどれだけ強く感じられたか、そしてその揺れが周囲にどのような影響を与えるかを測定するための尺度です。ここでは、震度の基本的な意味、震度とマグニチュードの違いについて解説します。
震度観測の歴史:体感から震度計へ
震度は現在、震度計で測定され、1996年に体感から震度計による測定に切り替わりました。それ以前は、体感を基に手動で報告されていましたが、この方法では主観的で時間がかかる問題がありました。
震度計による測定により、揺れの強さをリアルタイムで数値化し、より精度高く迅速に震度情報を提供できるようになりました。現在の震度は、震度計によって測定されたデータに基づき決定されています。
私が1990年から1991年にかけて、神戸海洋気象台で現業勤務をしていた頃、震度の観測は体感で行っていました。観測当番中、突然「感震ブザー」が鳴ると、ブザー音の「ブー」という音に驚き、すぐに地震計に飛びついて確認しました。
昔は震度計がないので、揺れを体感しながら震度を判断するとともに、地震計(59C型・100倍)を使ってP波とS波の到達時刻、最大振幅などを緊急で検測し、地震通報電文を組み立て、通報しました。瞬時の対応が求められる重要な業務でした。
震度階級とその意味:地震の揺れの強さを知る
震度とは、地震の揺れの強さを示す指標で、地震の震源地から伝わる揺れを観測した場所で測定します。震度は、揺れの強さや建物への影響を基にした尺度で、気象庁が定めた震度階級(0~7)に基づいています。震度0は感じないほどの揺れ、震度7は建物が倒壊するほどの強い揺れです。
震度は、0から7までの階級に分かれています。各震度は、その揺れの強さと、建物や人々に与える影響に基づいて分類されています。
- 震度0: 揺れを感じない、または感じることができても非常に軽微。
- 震度1: ほとんどの人が感じないが、わずかな揺れを感じることがある。
- 震度2: わずかな揺れを感じるが、通常は日常生活に影響はない。
- 震度3: 人々がはっきりと揺れを感じる。軽い物が動く程度の揺れ。
- 震度4: ほとんどの人が揺れを感じ、棚や物が落ちることがある。
- 震度5弱〜5強: 大きな揺れが感じられ、物が転倒するなどの被害が発生する可能性がある。
- 震度6弱〜6強: 強い揺れで、人々が転倒したり、建物に大きな被害を受ける可能性が高い。
- 震度7: 非常に強い揺れで、建物が倒壊するほどの影響を与える。
震度とマグニチュードの違い
震度とマグニチュードは、よく混同されることがありますが、実際には異なるものです。マグニチュードは、地震の規模(エネルギーの大きさ)を示す指標で、地震が発生した時のエネルギーの大きさを測定します。一方、震度は地震の揺れの強さを示すもので、地震が発生した地域でどれだけ揺れが感じられたかを表します。
例えば、マグニチュードが大きくても、震源が深かったり、遠くの地域で発生した場合、震度はそれほど強くないこともあります。逆に、マグニチュードが小さくても、震源が浅く、近くで発生すれば、震度は強く感じることがあります。
気象庁の震度計:どのように震度を測るのか、震度計と地震計の違い
震度計と地震計は、どちらも地震の揺れを感知する装置ですが、その目的と測定方法には大きな違いがあります。
- 震度計: 特定の地点での揺れの強さ(震度)を測定するための機器です。震度計は、揺れを感じた場所での人々の体感や建物への影響を考慮して、その揺れの強さを評価します。揺れの強さを記録し、地震の影響がどれほどのものかを示す指標として使用されます。これは、実際にどれくらい揺れを感じるかという観点から重要です。
- 地震計: 地震の波(特にP波やS波)を記録するための装置で、地震の規模や震源の位置を特定するために使用されます。地震計は、地震の発生時に地面の微細な動き(振動)を正確に計測し、地震のエネルギーや震源の深さ、震源地を特定するために必要な情報を提供します。地震計は、震源からの波動の伝わり方や、どれほど強いエネルギーが発生したかを評価するための基準となります。
震度計の仕組みについて
気象庁では、地震発生時の震度を迅速に測定するために、1996年10月1日から震度計を使用しています。震度計は、地面の揺れを感知するセンサーを備えた装置で、揺れの強さを測定します。気象庁が設置した震度計は、日本全国に広がっており、地震が発生すると、その揺れをリアルタイムで記録することができます。
震度計には、主に「加速度センサー」と「速度センサー」が使用されています。加速度センサーは、揺れの加速度を感知し、地震の初期の揺れを捉えるのに優れています。速度センサーは、揺れの速度を感知し、揺れの持続時間や変動のパターンを正確に測定することができます。これらのセンサーが協力して働くことで、震度計は地震の揺れの強さを測定します。
震度計の設置場所と観測方法
気象庁では、全国で約600箇所に震度計を設置しており、そのうち約200台が市町村庁舎の敷地内に配置されています。これらの市町村では、震度計が取得したデータを基に、分岐端子を通じて震度表示装置で震度を表示するとともに、データを都道府県や気象庁に伝送しています。
震度計は、都市部や地方を問わず、広範囲に設置されています。都市部では、重要な施設や公共施設、ビルの中に震度計が設置されており、地震の揺れを迅速に測定できるようになっています。また、山間部や交通の要所などにも設置されており、これらの震度計から得られた情報は、地震発生後に迅速に解析されます。
震度計の設置場所は、揺れの強さを正確に測定できる場所が選ばれています。気象庁が設置した震度計は約1,300台以上で、市町村設置の震度計も合わせるとその数はさらに増え、全国各地に分布しています。震度計のデータは、気象庁や関連機関に送信され、その後、迅速に震度情報として公表され、住民への迅速な情報提供に役立っています。
地震発生時に気象庁が発表する情報のタイムライン
地震発生後、次の順番で情報が発表されます。
ただし、震度速報、震源に関する情報の発表基準は震度3以上です。
約 数秒 緊急地震速報
約 1分半 震度速報
約 3分 津波警報・注意報
約 3分 震源に関する情報
約 5分 震源・震度情報
約10分 長周期地震動に関する観測情報
約15分 推計震度分布図
まとめ
地震が発生すると、震度の測定は私たちの安全を守るために非常に重要です。震度は、地震の揺れの強さを表し、その影響を正確に把握するために欠かせない指標です。気象庁では、震度計を使用して全国各地でリアルタイムに地震の揺れを測定し、迅速に情報を提供しています。震度計の設置場所や測定方法について理解することで、地震発生時の情報がどのように伝達されるか、そしてどのように私たちの安全に役立つのかがより明確になります。
また、震度とマグニチュードの違いについても把握しておくことが重要です。震度は揺れの強さを測るものであり、地域ごとに異なるため、正確な震度情報を把握することで、適切な対応ができます。
最後に、地震発生時に気象庁が発表する情報のタイムラインについても触れました。緊急地震速報から始まり、津波警報や震源情報、推計震度分布図など、情報は迅速に発信され、私たちにとって大切な役割を果たしています。これらの情報を適切に活用し、地震に備えることで、より安全に暮らすことができます。