東京で降る雪の可能性と大雪への備え|寒気と南岸低気圧を解説

大雪の風景

冬になると、東京での雪が話題になります。しかし、雪が降るにはいくつかの条件が必要です。特に、上空の寒気や低気圧の影響が大きく、これらがどのように雪雲を発生させ、降雪をもたらすのかが重要なポイントです。

この記事では、東京を例に、雪の降る可能性を左右する要因や、実際の予報をもとにした雪の影響について詳しく解説します。同様の要因は他の地域の降雪にも影響するため、広い範囲で参考にしていただけます。

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▶ 気象庁ホームページ「今後の雪の予報」
https://www.jma.go.jp/bosai/snow/

東京で雪が降るのは、冬の中でも特定の条件が揃った時に限られる現象です。他の地域と比べれば頻度は少なく、その背後には上空の寒気や低気圧の動きが大きな役割を果たしています。これらの要素がどのように影響し合うのかを詳しく見ていきましょう。

雪が降る条件:気温と湿度の役割

東京で雪が降るための主な条件は、地上付近の気温、湿度、そして上空の寒気です。通常、地上気温が0℃以下になると雪が降りやすくなりますが、気温だけでは雪が降るかどうかを確実に判断することは難しいです。

湿度も重要な要素で、湿度が50%前後の場合、地上気温が5℃から6℃でも雪に変わることがあります。湿度が低いと、雪の水分が蒸発しにくく、雪として降る可能性が高くなります。また、昇華作用により、雪の結晶が冷やされて溶けずに降ってくることもあります。

大雪の可能性を予測:上空1,500mと5,000mの気温の関係

  • 上空約1,500m(850hPa)の気温がマイナス6℃以下になると、雨が雪に変わる可能性が高まります。
  • 上空約5,000m(500hPa)の気温がマイナス36℃以下になると、大雪の可能性が高まります。

南岸低気圧と雪:降雪量を左右する条件

東京で雪が観測される際によく関係するのが南岸低気圧です。南岸低気圧は太平洋沿岸を東へ進む際、関東地方に湿った空気を供給します。この湿った空気が上空の寒気とぶつかると、雨が雪に変わりやすく、特に南岸低気圧が東京の南を通過すると、上空の寒気が引き込まれて雪が降る可能性が高まります。

南岸低気圧では大雪になることが多く、降雪量が大きくなることがあります。逆に、低気圧が北側を通過した場合は、暖かい空気が流れ込み、雪ではなく雨になることが一般的です。

気象庁では、上空の気温を示した予想図を公開しています。この予想図を活用することで、上空の気温の変化を確認することができますので、ご紹介いたします。

850hPa気温・風、700hPa上昇流/700hPa湿数、500hPa気温予想図

以下のリンクから、各時間帯の予想図をご覧いただけます。リンクをクリックすると、別のタブ(別の画面)で予想図が表示されます。
また、FXFE5782などの記号は、気象庁がその予報を識別するために使用している天気図の番号です。

( 出典:気象庁 数値予報天気図 https://www.jma.go.jp/bosai/numericmap/ )

予想図の見方と上空気温による雪の予測基準

予想図は2段に分かれており、上空の気温を確認することができます。

  • 上段: 500hPa面の等温線(上空約5,000mの気温)
    • 0℃を基準に3℃毎に太い実線で表示されます。
    • 大雪の目安は、500hPa面の気温がマイナス36℃以下であることです。
  • 下段: 850hPa面の等温線(上空約1,500mの気温)
    • 0℃線を基準に3℃毎に太い実線で表示されます。
    • 雪が降る目安は、850hPa面の気温がマイナス6℃以下であることです。

予想図を見やすくするための温度線のなぞり方

図が見づらい場合は、印刷して、以下の温度線を赤鉛筆でなぞると、より見やすくなります。
 500hPa(5,000m)の図には、-24℃、-30℃の線を赤鉛筆でなぞる。
 850hPa(1,500m)の図には、-0℃、-6℃の線を赤鉛筆でなぞる。
 (温度場の状況に応じて、赤鉛筆でなぞる温度は変更してください)

南岸低気圧とは、日本列島の南側の太平洋沿岸付近を通過する低気圧のことを指します。この低気圧が形成される主な要因は、寒気と暖気の境界線(前線)が沿岸付近で活発化することです。低気圧が発達しながら関東地方に近づくと、暖かく湿った空気が供給され、これが上空の寒気と衝突することで降雪が発生します。

東京などの都市部での降雪は、南岸低気圧が通過するタイミングに強く依存します。低気圧が東に抜けるタイミングや進路によって、雨か雪かが決まるため、予報官にとっては正確な進路の予測が重要です。

南岸低気圧と関東地方での降雪の関係

南岸低気圧による降雪は、関東地方に特有の現象と言えます。その理由は、以下のような条件が重なり合うためです。

  1. 上空の寒気
    降雪には上空約1500メートルの気温がマイナス6度以下であることが重要な条件となります。これにより地上付近の気温が下がり、雨が雪へと変わる可能性が高まります。
  2. 湿った空気の流入
    南岸低気圧がもたらす湿った空気は、降雪量を大きく左右します。特に太平洋側から吹き込む東風が、湿度の高い空気を供給し降雪の発生を助けます。
  3. 低気圧の進路
    低気圧が関東地方の南岸を通過する場合に最も降雪しやすい傾向があります。この進路によって、雪の降る範囲や強度が決まります。

南岸低気圧による降雪予測の難しさと最新技術

南岸低気圧に伴う降雪予測は非常に難しく、予測を誤ると雪ではなく雨となる場合があります。その要因として、以下が挙げられます。

  • 微妙な気温差
    地上気温が1~2度違うだけで、雪が雨に変わる可能性があります。
  • 降雪タイミング
    低気圧の進行速度が速いと降雪時間が短くなり、逆に速度が遅いと降雪量が増える可能性があります。

降雪予報は、気温や湿度、風速、雲の発生状況などの複雑な要素を組み合わせて予測する必要があります。気象庁では、数値予報モデル(NWP)を使用してこれらの要素を解析し、降雪の予測精度を高めています。特に、降雪が予想される地域の気象観測データをリアルタイムで収集し、降雪の強さや範囲、降雪時間などの予測に活用しています。

東京では、雪が降ると交通機関や道路に大きな影響を及ぼします。特に雪は、東京のような都市部では予期しない混乱を引き起こすことがあるため、事前に準備をしておくことが大切です。

交通機関の遅れと運行の乱れ

雪が降ると、電車やバスが遅延し、運休することがあります。特に雪が積もると、駅やバス停で混雑し、通勤や外出が困難になります。予め運行情報を確認し、余裕を持って行動しましょう。

  • 電車・バスの運行遅延
    雪でダイヤが乱れ、遅延や運休が発生します。
  • 道路渋滞
    雪や凍結により、車が立ち往生したり、渋滞が起こりやすくなります。

道路の凍結と対策

雪が積もると、道路が凍結し、滑りやすくなります。特に朝晩の通勤時間帯は危険が増します。車や歩行者にとって、滑りやすい道路で事故や転倒のリスクが高まります。

  • 凍結した道路
    気温が低下すると、道路が凍結して滑りやすくなります。
  • 対策
    自動車や自転車の移動を避け、歩行時には滑りにくい靴を履くことをおすすめします。

視界不良とその対策

降雪が続くと視界が悪化し、歩行者や車両の移動が難しくなります。吹雪や強風を伴う場合、視界不良による交通事故や遭難のリスクが増加します。

  • 視界不良
    降雪や吹雪で視界が狭くなり、交通の妨げになります。
  • 対策
    自動車の運転は避け、公共交通機関を利用するか、外出を控えたほうが良いでしょう。

雪が予報される時の準備

雪の予報が出た場合、交通機関や道路の状況が急に変わることがあります。事前に情報を確認し、早めに行動しましょう。自宅周辺の雪かきや滑り止め対策も忘れずに行い、安全を確保することが大切です。

  • 出かける前の注意点
    遅延や運休の情報を事前に確認し、移動計画を立てましょう。特に公共交通機関を利用する場合は、運行状況を確認しておくことが大切です。また、車での移動が必要な場合は、冬用タイヤや防寒具を準備し、安全を最優先に慎重に対応しましょう。
  • 自宅周辺の対策
    自宅前や周辺の歩道に積雪が予想される場合、雪かき用具を準備しておき、積雪があった際には早めに雪かきを行い、通行の安全を確保しましょう。また、万が一の停電に備えて、懐中電灯や温かい飲み物の準備もおすすめです。

東京で雪が降るためには、上空の寒気や低気圧の動きが重要な役割を果たします。特に、南岸低気圧が東京近郊を通過すると、湿った空気と上空の寒気がぶつかり、雪をもたらす可能性が高くなります。降雪が予測される際には、地上の気温だけでなく、上空の気温差や低気圧の進行状況を総合的に判断することが重要です。

東京では、雪が降ることで交通機関の遅延や運休、道路の凍結など、さまざまな影響が予想されます。降雪時には、事前に天気予報や雪の影響に関する情報を確認し、安全対策を講じることが大切です。また、雪かき用具の準備や自宅周辺の対策も、万全を期すために重要です。

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