冬になると東京での雪が話題になりますが、雪が降るためにはいくつかの要因が必要です。特に、上空の寒気や低気圧の影響が大きく、これらがどのように作用するかが雪の予報に重要な役割を果たします。
この記事では、東京で雪が降る可能性を左右する要因と、実際の予報に基づいた雪の影響を詳しく解説します。
東京で雪が降るために必要な上空寒気と地上気温の条件
東京で雪が降るのは、冬の中でも特定の条件が揃った時だけに見られる珍しい現象です。その背後には、上空の寒気 や 低気圧の動き が大きな役割を果たしています。これらの要素がどのように影響し合うのかを詳しく見ていきましょう。
東京で雪が降る典型的なパターンと条件
東京で雪が降る条件の一つとして、地上付近の気温が大きな役割を果たします。一般的に、気温が 0度以下 になると雪が降りやすい状況が整います。ただし、これはあくまで目安であり、気温だけで確実に雪が降るかを判断することは難しいです。
東京のような都市部では、地面の熱やビル群の放熱によって気温がわずかに高くなることがあり、降雪条件が影響を受けます。
また、地上の気温が1~2度であっても、上空の気温が十分低い場合には雪が降ることがあります。したがって、 地上と上空の気温差 を考慮することが重要です。
上空の寒気の影響
- 上空約1,500m(850hPa)の気温がマイナス6℃以下になると、雨が雪に変わる可能性が高まります。
- 上空約5,000m(500hPa)の気温がマイナス36℃以下になると、大雪の可能性が高まります。
降雪の条件
- 地表付近の気温が3℃以下であることが重要です。
- 特に夜間や早朝は、放射冷却により気温が下がりやすく、降雪の条件が整いやすくなります。
南岸低気圧の影響
東京で雪が観測される際に頻繁に関連するのが 南岸低気圧 です。この低気圧は太平洋沿岸を東へ進む際に、関東地方に湿った空気を供給します。この湿った空気が上空の寒気とぶつかると、雨が雪へと変わります。
南岸低気圧が東京の南を通過すると、冷たい空気が引き込まれ、東京都心でも雪が降る可能性が高まります。一方で、低気圧が北側を通過した場合は暖かい空気が流れ込み、雨になることが多いのが特徴です。
気象庁の観測資料で大雪と降雪条件を確認する方法
気象庁では、上空の気温を示した予想図を公開しています。これを使うことで、上空の気温の変化を確認することができます。
次に紹介する予想図を見ると、さらに詳しい情報が分かります。
850hPa気温・風、700hPa上昇流/700hPa湿数、500hPa気温予想図
以下のリンクから、各時間帯の予想図をご覧いただけます。リンクをクリックすると、別のタブ(別の画面)で予想図が表示されます。
また、FXFE5782などの記号は、気象庁がその予報を識別するために使用している天気図の番号です。
- 12・24時間予報(FXFE5782)
予想図を見る
URL: https://www.jma.go.jp/bosai/numericmap/data/nwpmap/fxfe5782_00.pdf - 36・48時間予報(FXFE5784)
予想図を見る
URL: https://www.jma.go.jp/bosai/numericmap/data/nwpmap/fxfe5784_00.pdf - 72時間予報(FXFE577)
予想図を見る
URL: https://www.jma.go.jp/bosai/numericmap/data/nwpmap/fxfe577_00.pdf
( 出典:気象庁 数値予報天気図 https://www.jma.go.jp/bosai/numericmap/ )
予想図の見方と上空気温による雪の予測基準
予想図は2段に分かれており、上空の気温を確認することができます。
- 上段: 500hPa面の等温線(上空約5,000mの気温)
- 0℃を基準に3℃毎に太い実線で表示されます。
- 大雪の目安は、500hPa面の気温がマイナス36℃以下であることです。
- 下段: 850hPa面の等温線(上空約1,500mの気温)
- 0℃線を基準に3℃毎に太い実線で表示されます。
- 雪が降る目安は、850hPa面の気温がマイナス6℃以下であることです。
予想図を見やすくするための温度線のなぞり方
図が見づらい場合は、印刷して、以下の温度線を赤鉛筆でなぞると、より見やすくなります。
500hPa(5,000m)の図には、-24℃、-30℃の線を赤鉛筆でなぞる。
850hPa(1,500m)の図には、-0℃、-6℃の線を赤鉛筆でなぞる。
(温度場の状況に応じて、赤鉛筆でなぞる温度は変更してください)
大雪の原因となる南岸低気圧とは?
南岸低気圧とは、日本列島の南側の太平洋沿岸付近を通過する低気圧のことを指します。この低気圧が形成される主な要因は、寒気と暖気の境界線(前線)が沿岸付近で活発化することです。低気圧が発達しながら関東地方に近づくと、暖かく湿った空気が供給され、これが上空の寒気と衝突することで降雪が発生します。
東京などの都市部での降雪は、南岸低気圧が通過するタイミングに強く依存します。低気圧が東に抜けるタイミングや進路によって、雨か雪かが決まるため、予報官にとっては正確な進路の予測が重要です。
南岸低気圧と関東地方での降雪の関係
南岸低気圧による降雪は、関東地方に特有の現象と言えます。その理由は、以下のような条件が重なり合うためです。
- 上空の寒気
降雪には上空約1500メートルの気温がマイナス6度以下であることが重要な条件となります。これにより地上付近の気温が下がり、雨が雪へと変わる可能性が高まります。 - 湿った空気の流入
南岸低気圧がもたらす湿った空気は、降雪量を大きく左右します。特に太平洋側から吹き込む東風が、湿度の高い空気を供給し降雪の発生を助けます。 - 低気圧の進路
低気圧が関東地方の南岸を通過する場合に最も降雪しやすい傾向があります。この進路によって、雪の降る範囲や強度が決まります。
南岸低気圧による降雪予測の難しさと最新技術
南岸低気圧に伴う降雪予測は非常に難しく、予測を誤ると雪ではなく雨となる場合があります。その要因として、以下が挙げられます。
- 微妙な気温差
地上気温が1~2度違うだけで、雪が雨に変わる可能性があります。 - 降雪タイミング
低気圧の進行速度が速いと降雪時間が短くなり、逆に速度が遅いと降雪量が増える可能性があります。
降雪予報は、気温や湿度、風速、雲の発生状況などの複雑な要素を組み合わせて予測する必要があります。気象庁では、数値予報モデル(NWP)を使用してこれらの要素を解析し、降雪の予測精度を高めています。特に、降雪が予想される地域の気象観測データをリアルタイムで収集し、降雪の強さや範囲、降雪時間などの予測に活用しています。
南岸低気圧による雪の影響
南岸低気圧による降雪や積雪は、交通や社会活動に大きな影響を及ぼします。
- 交通機関の乱れ
積雪が予想される場合、鉄道や航空便の運休、道路の凍結や積雪による通行止めが発生する可能性があります。 - ライフラインへの影響
大雪による積雪が原因で停電が起こることもあります。また、寒気による低温が原因で水道管が凍結することもあります。特に東京のような積雪に慣れていない都市部では、予想外の被害が出る場合があります。 - 農業や物流への影響
積雪や低温により農作物が被害を受けたり、物流が滞ることがあります。
東京の雪による影響と対応方法
東京では、雪が降ると交通機関や道路に大きな影響を及ぼします。特に雪は、東京のような都市部では予期しない混乱を引き起こすことがあるため、事前に準備をしておくことが大切です。
交通機関の遅れと運行の乱れ
雪が降ると、電車やバスが遅延し、運休することがあります。特に雪が積もると、駅やバス停で混雑し、通勤や外出が困難になります。予め運行情報を確認し、余裕を持って行動しましょう。
- 電車・バスの運行遅延
雪でダイヤが乱れ、遅延や運休が発生します。 - 道路渋滞
雪や凍結により、車が立ち往生したり、渋滞が起こりやすくなります。
道路の凍結と対策
雪が積もると、道路が凍結し、滑りやすくなります。特に朝晩の通勤時間帯は危険が増します。車や歩行者にとって、滑りやすい道路で事故や転倒のリスクが高まります。
- 凍結した道路
気温が低下すると、道路が凍結して滑りやすくなります。 - 対策
自動車や自転車の移動を避け、歩行時には滑りにくい靴を履くことをおすすめします。
視界不良とその対策
降雪が続くと視界が悪化し、歩行者や車両の移動が難しくなります。吹雪や強風を伴う場合、視界不良による交通事故や遭難のリスクが増加します。
- 視界不良
降雪や吹雪で視界が狭くなり、交通の妨げになります。 - 対策
自動車の運転は避け、公共交通機関を利用するか、外出を控えたほうが良いでしょう。
雪が予報される時の準備
雪の予報が出た場合、交通機関や道路の状況が急に変わることがあります。事前に情報を確認し、早めに行動しましょう。自宅周辺の雪かきや滑り止め対策も忘れずに行い、安全を確保することが大切です。
- 出かける前の注意点
遅延や運休の情報を事前に確認し、移動計画を立てましょう。特に公共交通機関を利用する場合は、運行状況を確認しておくことが大切です。また、車での移動が必要な場合は、冬用タイヤや防寒具を準備し、安全を最優先に慎重に対応しましょう。 - 自宅周辺の対策
自宅前や周辺の歩道に積雪が予想される場合、雪かき用具を準備しておき、積雪があった際には早めに雪かきを行い、通行の安全を確保しましょう。また、万が一の停電に備えて、懐中電灯や温かい飲み物の準備もおすすめです。
まとめ
東京で雪が降るためには、上空の寒気や低気圧の動きが重要な役割を果たします。特に、南岸低気圧が東京近郊を通過すると、湿った空気と上空の寒気がぶつかり、雪をもたらす可能性が高くなります。降雪が予測される際には、地上の気温だけでなく、上空の気温差や低気圧の進行状況を総合的に判断することが重要です。
東京では、雪が降ることで交通機関の遅延や運休、道路の凍結など、さまざまな影響が予想されます。降雪時には、事前に天気予報や雪の影響に関する情報を確認し、安全対策を講じることが大切です。また、雪かき用具の準備や自宅周辺の対策も、万全を期すために重要です。